ロストマーブルズ
「トニー、鳥じゃないんだから、奇声上げるのやめろよ」

「だって、弁当作ってもらって一緒に食べたとか、目が合ってドキドキしたとか、一緒にガキの野球の応援したとか、ジョーイらしからぬ話にびっくりしてんだよ。しかもそれを隠さず俺に言うなんて、それも信じられない」

「まあな、この俺ですら驚いてるくらいだ。自分でもなぜそうなったのか分からないんだ」

「なあ、ジョーイ、俺思うに、ジョーイはキノを好きになったんじゃないのか。恋をすれば人は変わっちまうからな」

「俺がキノを好き……」

「別に恥ずかしがることなんてないぜ。男ならそういうのは当たり前の感情だ。俺なんかしょっちゅう女に惚れてるぜ。ジョーイの場合、やっと目覚めたってところかな」

 ジョーイは少し黙って何かを考え、そして決心がついたのか勢いつけて口を開いた。

「トニー、俺、過去にアスカっていう女の子に会った事があったんだ。実はその子がキノなんじゃないかってずっと思ってた」

 ジョーイは出口を見つけたくて、助けを懇願する瞳をトニーにぶつけた。

 トニーは訳ありだと察すると、持っていた箸を静かに置き、真面目に語りだしたジョーイの話に耳を傾けた。
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