ロストマーブルズ

 通勤、通学の人ごみに紛れ、ジョーイとトニーはシンクロナイズで大きなあくびをして、目じりをぬらしていた。

 駅のホームで電車を待つ人々が、ぼやけて見える。
 ジョーイが目を擦り、だらけ切っていた時、後ろで「おはよう」と声を掛けるものが現れた。

 二人が同時に振り向くと、そこにはキノが立っていた。

「キ、キノ!」

 あまりの驚きにジョーイの声が裏返る。
 トニーも隣で驚きつつも、すぐさまニヤリとしていた。

「おい、ジョーイ、昨晩言ったこと忘れるなよ」

 トニーが肘でジョーイを突いた。

「忘れるも何も、まだ心の準備が」

 ジョーイの慌てぶりにトニーは笑っていた。

 ジョーイは照れながらキノと向き合う。
 その純情であどけないジョーイの瞳をキノは目を逸らさず受け止めた。

 トニーはそれをいい雰囲気だと思い、二人の邪魔をしないようにそっと背を向けた。
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