ロストマーブルズ
「私が弄んでる? あら、そんな風に思われるなんて私も気をつけなくっちゃね。私はこれでも生徒のことを考えて行動しているだけだわ」

「それにしては、キノにはなんか冷たい印象がしたのは気のせいなのか?」
 ここぞとばかりに、ジョーイはクラブ活動中に抱いた違和感を単刀直入にぶつけた。

「あら、どういうこと?」

 眞子の顔つきが少し変わり、ジョーイを見つめる目が厳しくなった。

 癒し系でおっとりしていた眞子が豹変する。

 どこか抜け目なく、物事を鋭く見るような目つきに変貌していた。
 本能であまり係わりたくないと思うくらい、その時の眞子は威圧的だった。

「いえ、別になんでもありません」

 ジョーイは圧倒されて、一歩引いた。

「それじゃ、私は用事があるので失礼するわ」

 最後は穏やかな優しい笑みを浮かべ、眞子は去っていった。

 薄暗い廊下に、コツコツと響くヒールの音が、妙に耳に付く。

 得体の知れない、怪しげな雰囲気が漂い、聞いていて不安になった。
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