ロストマーブルズ
「(だから、俺の他にもう一人ジョーイの監視役を置いてるんだろ。電車の中でずっと前にそれらしき人物に出会ったよ。見かけは日本人だったが、あれは純粋な日本人じゃなかった。時々ジョーイと外を出歩くとそいつを見かけたから、追いかけて声を掛けたよ。そいつは何も言わなかったが、振り向きざまに俺のこと知ってるような顔をして嫌味ったらしく笑っていた)」

「(そっか、ノアとは面識があったのか。それなら話は早い。そうだ、彼もジョーイを監視している一人だ)」

「(ノア…… やっぱりそうか)」

「(とにかく、不審な動きがないかそれだけは目を光らせておいてくれ。何か気がついたことがあればすぐに連絡をしろ)」

「(一つ聞きたいんだが、キノはこの件に関係あるのか)」

「(言ったはずだ、この件に関しての質問はするなと)」

「(シアーズ先生からは詳しいことは何一つ知らされてないが、昨日ジョーイが過去の話をしてくれたよ。家が爆発して、アスカという女の子が消えたとかな。そしてジョーイはその消えたアスカがキノなのではと思っていることまで色々と話してくれたよ)」

 シアーズの目の色が変わった。

「(ジョーイがそこまでお前に心を許したとは驚きだ。だがそれ以上首を突っ込むな。場合によってはお前は日本にいられなくなるぞ)」

「(最後は脅しか。なんだかシアーズ先生に興ざめしちゃうな。まあ約束だから仕方ないけどな)」

「(話はこれで終わりだ。もういい、行け)」

「(はいはい。では失礼します)」
 トニーは飄々として部屋を出て行った。

 シアーズは限界を感じるように、部屋の隅のデスクに腰掛けて気難しい顔をしていた。
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