ロストマーブルズ
「嫌よ、絶対いや」

「どうしてそこまで、ムキに嫌がるの? もしかして汚な部屋とか?」

「リルも突然どうしてそんなこと言い出すの?」

 どちらも引けを取らずに、ぶつかりあっていたが、リルはそれを楽しんで嫌がらせしているようにも見えた。

 キノの弱点を突いた攻撃。

 それがリルの憂さ晴らしにも思えた。

 案外と下らない理由だったので、トニーにはつまらなく、最後は呆れて放っておいた。

「おい、ジョーイ、何モタモタ歩いてんだよ。さっさと帰るぞ」

 一斉に三人からの注目を浴び、ジョーイはモヤモヤする気持ちを抱えたまま、無理に彼らの側に駆けていく。

 キノがジョーイを見つめると、リルはそれに対抗心を燃やし攻撃し始めた。

 トニーは巻き込まれても嫌だと携帯電話を弄りながら先頭を歩き出した。

 日は暮れかけて、空が群青色に薄暗くなっていく。

 四人は夕暮れの中、闇に飲み込まれていくように黒いシルエットになって歩いていた。
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