ロストマーブルズ
 乗り換え駅で降り、連絡通路を歩いていると、ジョーイは後ろから目を覆い隠された。

「だーれだ」

「詩織……」

 目を覆った手を払う気力もなく、ジョーイはされるがままになっていた。

「当たり~」

「こんな時間にここで何してんだよ」

「それはジョーイも同じでしょ。ハーイ、キノちゃん。元気?」
 相変わらず、キノにもベタベタと触り、キノもタジタジとしていた。

「おっ、すげぇ、美人。俺、トニー、ジョーイの親友。よろしく」

 白鷺眞子はどこ行ったんだとジョーイは突っ込みたくなる。

「初めまして、私は詩織。日本語上手いんですね」

 トニーは謙遜することなく、得意げになっていた。

「ジョーイ、結構隅に置けないな。俺の知らないところでこんな美女と付き合ってたんじゃないか」

「そんなんじゃねぇーよ」

「もう、ジョーイったら照れることないでしょ。私はいつでも付き合ってもいいんだから」

 甘えた声で、詩織はジョーイの腕に自分の手を絡ませた。

「おい、やめてくれ」

「あれっ? キノ、リルの時と違ってここはジョーイを取り合わないのか? キノもジョーイのことが好きなんだろ」

 キノはトニーにいきなり話を振られて驚いていた。
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