ロストマーブルズ
 肝心なところは伏せていたので、どこまで言いたいことのニュアンスが通じているのか少し慎重に話していた。

 キノは眼鏡の奥から澄んだ瞳でジョーイを見つめ、話を漏らさないように聞いている。

「キノがビー玉を俺の目の前で転がして『I lost my marbles』って言った言葉が、過去の記憶と重なってしまった。俺の友達も同じことを言って、そして二つの意味があることで俺がそれを指摘して笑っていたんだ。それから、キノを通じて友達の面影を思い出しているうちに、それがいつの間にかキノを意識するようになってしまったっていうことなんだ」

 ジョーイが話し終えた後、キノは口元を上げてにこりとした。

「そっか、そういうことなら気にしないで。私も今朝リルと張り合ったような態度をとったけど、あの時リルの自分の感情をあからさまにする態度が羨ましくて、つい真似したくなっちゃったの。私、あまり友達いないから、ああやって女の子同士で張り合うこと一度やってみたかったし、高校生らしく恋の真似事もつい経験したくて、調子に乗っちゃったの」

「えっ」

 ジョーイは困惑していた。

 キノは自分の話に合わせて恋愛ごっこと片付けようとしているだけなのだろうか。

 話の核心を避けて上辺だけを無難に話すことに、自分の期待から外れてしまう。

 うやむやにされたくない思いに瞳が揺れて、視界がぼやけるようだった。
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