ロストマーブルズ
「でも私のマンションはすぐそこだよ」

「それでも送るよ」

 ジョーイはまたしっかりとキノの手を握って、改札口へと向かった。

 自分ですごいことをしでかしたと、まだ少し戸惑っているが、ドキドキが悪くない。

 青春真っ只中にいる自分が誇らしかった。

 駅を出てショッピングセンターに続く連絡橋を歩いている時、キノが指で虚空を差した。

「あれが私の住んでいるアパートメント。日本ではマンションっていうけど、英語のマンションって言ったら豪邸だから、私には抵抗ある」

 それはすぐ目の前にある、この辺で一番大きく、防犯設備の整っているところだった。

「あんな素敵なところに住んでいるのに、どうしてリルが遊びに来たいって言っても断ったんだい」

「それは、その、リルとはまだ知り合ったばかりだし、まだそんなに親しくないから……」

「じゃ、俺はそのうち呼んでくれるのかい?」

「えっ、そ、そうね。その時はしっかりと掃除しなきゃ、今はやっぱりジョーイでも困る」

 誤魔化すようにキノは答えていた。

「いいよ、無理しなくても。しかし今何時だ。すごい腹減った。遅くなりついでだ。一緒に何か食べないか」

 キノもジョーイの誘いに答えようと笑顔でいたが、目の前に突然現れた人物を見て一瞬にして血の気が引いて、ジョーイの手を無理に離した。
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