ロストマーブルズ
「待ってくれジョーイ。ずっと前に大豆のことを俺に聞いたよな。俺、他の奴にも大豆についてどう思うか聞かれたんだ。変な奴だなって思いながらも、そいつアメリカ出身だったから同郷のよしみで何度か会って食事に誘われて仲良くなっていったんだ。酒もそいつと飲んだ。ちょうどジョーイと喧嘩したときも奴と会ったんだ。その時、愚痴のつもりでお前のこと話しちまって、そしたらあいつ不公平だなって同情してくれた」

「まさかそいつの名前はギーっていうんじゃないだろうな」

「やっぱりジョーイの知り合いなのか」

「知り合いも何もあいつはFBIだ」

「FBI? まさかあいつ俺から何か探ってたのか。実は今日も駅で声を掛けられて一緒に飲んだ。その時、喧嘩のことを持ち出されたから、仲直りしたって言ったら、それからジョーイの事を色々聞かれたよ。相変わらず何するのも器用かとか、天才かとか。そしてやっぱり不公平だなって言うから、今度は何が不公平なんだって聞いたら、頭を指すんだ。そして俺が欠陥品だっていいやがった。あいつ、俺が学習障害なことを知ってやがった。それで俺が孤児なのは不要な人間だから親に捨てられたんだとかまで言い切った。完璧な人間のために不幸な人間まで作り出す世の中が許せないとか訳のわからないことも口走ってたけど、自分が欠陥品と言われて腸煮えくり返って、酒の勢いもあったからこうなっちまった。ジョーイ、迷惑かけてすまない」

 トニーは理由を話して落ち着いたのか酔いのせいなのか、そのままごろんと物が散らかった床に寝転がった。

 ジョーイはトニーの姿を見下ろしながら、ギーにぶつけられた質問の意味を暫く考えていた。

 ギーがトニーに近づいた理由。
 そしてこの有様。

 キノとノアの事も知っていた。

 自分の父親の事も知っていた。

 これらが全て関係しているのなら、元を辿れば父親が何をしていたかに繋がってくるというのだろう。

 父親が一体何をしていたか、それを知るには母親が隠して飾っていたあの写真にヒントがあるのかもしれない。
 
 トニーに布団を掛けてやった後、母親の部屋へ向かった。
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