ロストマーブルズ
 駅に向かっている途中、キノの住んでいるマンションが視界に入った。

 キノに会いたい気持ちをぐっと飲み込んだ。

 キノのおかれている状況が判った今、その原因を作った父親の罪を償いたいと切に願う。

 どんな真相が待っていようと、ジョーイは全てを受け入れ、立ち向かうつもりでいた。

 キノへの思いを強く心に募らせ、ジョーイは体を震わせた。


 学校に着き、校門を潜ると、ジョーイは自らシアーズの下へ歩いていった。

 トニーは見て見ぬふりをし、黙って一人で教室へ向かう。

 校舎に入る前に一度振り返れば、その時、すでにジョーイとシアーズが対峙していた。

 穏やかではないのが伝わってくるが、ここからは自分は関与できないことをトニーは充分に理解していた。

 代わりに、空を見上げた。

「なんとも清々しい青空だぜ。皮肉だな」

 ジョーイの心とは裏腹の空を見て、ふーっと息をもらしていた。
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