ロストマーブルズ
 放課後になると、シアーズの方から姿を現し、顎を一振りして『ついてこい』と指図された。

 心配するトニーに見守られ、ジョーイは後をついて行く。

 シアーズは背が高く、がっしりとした体躯の持ち主だった。

 威厳に溢れ、誰も刃向かえない雰囲気がある。

 自分の父親も堅物と聞いていたが、こんな風に歩くのではないだろうかとシアーズの背中を見て、想像していた。

 何も知らなかった無邪気な子供の頃は、父親を尊敬していたはずだった。

 その陰で、倫理から外れたことを平気でしていたと思うと、鉛を飲まされたように心が重くなっていた。

 シアーズは父親の事について、何を話すというのだろう。

 ジョーイはそのときを静かに待っていた。

 シアーズが立ち止まった先には、生徒指導室と記されたドアがあった。

 先にシアーズが入り、ジョーイは静かに後をついて行く。

 部屋は、空気の流れがなく、圧縮された重みがあった。

 どこか息苦しい。
< 264 / 320 >

この作品をシェア

pagetop