ロストマーブルズ
「キノ、帰っちゃったのか。なんだか寂しい。あんなに私と言い争った人なんて居なかった。私いつも影で何か言われるか、空気のようなどうでもいい存在だった。でもキノは真っ向からぶつかってくれて、今思うと楽しかった。あのまま一緒にいたらいい友達になれたかもしれないのにな」

「キノもきっと同じこと思ってるよ」

「そうだったら嬉しいな」

 リルはそっと涙を拭いて、空を見上げていた。


 駅に着けば、お互いのホームを目指して別れる。

 またいつものようにリルの電車が先に来て、それに乗り込んでリルは窓から手を振って去っていた。

 その時、はっきりとリルの笑顔をジョーイは見ていた。

 急に寂しさが込み上げ、キノがかつて座っていたベンチを見つめた。

 ビー玉がまだそこらへんに転がっているような気になった。

(生きていたら会えるだと? だったら今すぐ会いたいっていうんだよ)

 ジョーイは叫びたくなる気持ちを抑え、肩を震わしていた。

 そして乗り換えの駅に着いて、連絡通路を歩いているとき、いつかのキノを追いかけていたストーカーを見かけた。

 お互い目があって「あっ」と声を上げる。

 ストーカーは逃げようとしたが、ジョーイがその前に機敏に動いて前を立ちふさがった。
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