ロストマーブルズ
「ああ、俺の名前だ。宜しくな」

「はい、僕は渋川カオルです」

「カオルか」

「そうなんです。よく名前だけみたら女みたいだと思われます。こんな風貌だから顔と名前が合ってないとかも」

「俺はそこまでいってないぜ」

「あっ、そうですね。でも自己紹介すると必ず言われるからつい癖で」

「いいじゃないか、見かけ通りの名前じゃなくても」

「あなたも喋ってみるとなかなかいい人そうなんですね」

「それって、俺は見かけが悪人か?」

「そ、そういうわけじゃ」

 どっちもお互い様だった。

 カオルは見かけと名前が確かに合ってない。

 でもそのギャップがいい味でてなかなか面白い。

 見かけはアレかもしれないが、中身はいい奴そうだと、口には出さなかったが、ジョーイは一緒に笑いあっていた。

 その後は気分良く「またな」とお互い挨拶をして別れ、自分のホームに向かっていった。

 カオルとの出会いはキノが残していった置き土産のように思え、ジョーイはそこから何かを感じ取る。

 悲しんでばかりもいられなかった。

 そして自分の駅に着いて改札口を出た時、帰りを待っていたように近寄ってくるものがいて、ジョーイは目を見開いて驚いた。
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