ロストマーブルズ

「ツクモじゃないか。なぜここにいる」

 ツクモは尻尾を思いっきり振り、ジョーイの足元に体を摺り寄せる。

 口にくわえていたものをポトリとジョーイの目の前に落とした。

「これはキノの黒ぶち眼鏡。ツクモどういうことだ」

 ツクモは「ワン」と一度吼えた。

 ジョーイは眼鏡を拾い、キノが居るのではと辺りを見回したが、いくら探せど姿は見当たらない。

「ツクモ、キノは近くに居ないのか?」
 
 ツクモに聞いてみたところで、鼻をクーンと鳴らすだけだった。

 そしてしきりに体を撫ぜろと催促するようにジョーイに頭を摺り寄せる。

 ジョーイはツクモの目線までしゃがみこんで、両手で抱え込むように色んなところを撫ぜてやった。

 ツクモはきっちりかしこまって座り、首を上下に何度も動かしていた。

「どうしたんだ。首が痒いのか?」

 ツクモのリクエスト通りに、首を撫ぜてやる。

 ツクモはその間、何かを知らせるように何度も吼えていた。

 ツクモの首には、黒い革の首輪がついている。

 まるで首輪を見ろと言われているように思え、ジョーイはツクモの首輪を調べ始めた。

 すると内側に細工がしてあり、そこに紙が細く折り曲げられてくっついていた。

「こ、これは手紙?」

 ジョーイはそれを取り出し広げた。
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