ロストマーブルズ
「(ギー、やめろ。あんたはFBIなんじゃないのか)」

「(真実を暴くためなら犠牲者が出てもいい)」

「(無茶苦茶だ)」

「(さてと、ジョーイ、父親の居場所を教えてもらおうか)」

 包丁を握っている手に力が入った。

「(俺は全く知らない。俺の方が訊きたいくらいだ)」

「(そのままだと友達を一人亡くすぞ)」

「(やめるんだ。ギー。FBIならFBIらしく捜査しろよ)」

「(俺が手順を踏んでやっても、なぜかあと一歩のところで上手くいかない。必ずどこかで邪魔が入り情報が跡形もなく根こそぎ消されて逃げられてしまう。今回もだ。何一つつかめないものだから、挙句の果てに無駄な捜査ばかりするなと、とうとうこの件から手を引けって長官直々に命令された。もう我慢ならない。それなら俺の首を賭けてでも真実を暴いてやる。さあ、知ってるだけの情報を俺に言うんだ)」

 ギーの焼き付けるような睨みは本気だった。

 狂気に満ちて、見境なくなっている。

 ジョーイはごくりと喉をならし、息詰まっていた。

「(何をもたついているんだ。早く話せ)」

 包丁がトニーの首に容赦なく押し当てられる。

 ジョーイは咄嗟の機転でこの時ある事を思いついた。

 一か八かの賭けに望を託す。

 無謀でジョーイも本当に通用するか半信半疑だったが、他に方法もなくやるしかないと握り拳に力を入れて覚悟を決めた。
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