ロストマーブルズ

「そっか、キノは本国に帰っちまったのか」

 夜遅く、やっと静かになったリビングルームのソファーに深く座り、トニーは呟いた。

 ジョーイはシアーズから聞いた真相には触れずに、ツクモと一緒に床に座りながら、当たり障りのないことだけをトニーに説明していた。

 トニーもジョーイが話すこと以外、詳しい真相を訊こうと突っ込みもしなかった。

 FBIがあんな風に絡んできた以上、真実を知ってまた命を狙われては困るとばかりに怖くて聞きたいとも思わない。

「ツクモ、寂しいだろうけど、俺達がかわいがってやるからな」

 トニーの言葉にツクモは尻尾を振って「ワン」と返事する。

 トニーの足元に絡んではじゃれ付き、頭を突き上げて早速体を撫ぜて可愛がれと催促しているようだった。

「お前、かわいいな」

 トニーもすぐにツクモを気に入り、体を撫ぜてスキンシップをとっていた。

 その様子をジョーイは微笑ましく見ていたが、突然思い出してはっとした。

「そうだ、なあ、トニー、これどう思う?」

 ジョーイはキノの手紙をポケットから取り出し、前に突き出した。
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