ロストマーブルズ
 目が覚めた時、暫く放心状態になっていた。

 夢か現実か、その境目を漂うぼやけた状態。

 メラメラと燃える炎がまだ目の前にちらつく。

 悪い夢といっていいのだろうか。

 実際に体験したことだというのに。
 
 体もだるく疲れ切っていた。

 夢の中で神経を消耗したのかもしれない。

 時計を見れば、いつもの起きる時間だった。

 だが学校に行く気分になれず、ジョーイはベッドに横たわり天井をひたすら見つめていた。

 時計の針がどんどん進んでも起き上がろうとはしなかった。

「おい、ジョーイ学校に遅れるぞ」

 トニーが心配して起こしに来る。

「俺、学校休む。シアーズにそう言っておいてくれ。どうせ昨晩のギーの一件のこと奴に報告するんだろ」

「まあな。ジョーイも少しは休んだ方がいいだろうな。シアーズもそう思っているかもな。じゃあ、俺は言ってくるわ。昨日怖い思いしたから、眞子ちゃんに会って慰めてもらわなくっちゃ」

「その白鷺先生だが、止めた方がいいぞ。やっぱり大人の女性はずるいぜ」

「なんだよ、俺の夢壊すようなこと言うなよ。絶対、俺、くどいてやるんだから」

 何も知らない方が幸せなのかもしれない。

 ジョーイはトニーの好きにさせておいた。

 トニーは鼻歌交じりに階段を下りていく。命に係わるような事件に巻き込まれたというのに、それをすっかり忘れているように思えた。

 トニーのお気楽さはジョーイも見習いたかった。
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