ロストマーブルズ

 二度寝しようにもすっかり目が冴えてしまった。

 天井ばかり見ているのも飽きてきた。

 寝返りを打てば、ツクモが床に伏せているのが目に入る。

 文句も言わず、忠実にジョーイに仕え、命令があるまで、ひたすらじっとしていた。

「ツクモ、腹へったか?」

 ツクモの垂れた耳がぴくっと反応し、申し訳なさそうにジョーイに丸い目を向けていた。

「そうだよな、腹は減るよな」

 ベッドから起き上がり、ツクモを呼んだ。

 ツクモはすぐに身を寄せてかしこまって座った。

「待ってろよ、ドッグフード買ってくるからな」

 ツクモは期待して尻尾を小刻みに振っていた。

 身支度をさっさと済ませて、ジョーイが外へ出た時、例の噂好きのおばさんが吸い付くように側にやってきた。

「ジョーイ君、昨日大変だったわね。泥棒が入ったんでしょ。大丈夫だった?」

 ギラギラとした目を光らせ、体の太さに似つかわしい厚かましさで寄り添ってくる。

「はい、ご心配おかけしてすみません」

「いいのよ、だけどあの泥棒、外国人みたいだったけど、もしかして他になんか理由があるんじゃないの?」
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