ロストマーブルズ
 結構鋭い突っ込みに、おばさんの噂好きの能力も侮れない。

 この調子では、好奇心が収まるまでネチネチと訊いてくるだろう。

 訊いてくるだけならまだいいが、その後は、話に尾ひれがついて、どんどん大げさに語られるかもしれない。

 ギラギラとした目が、いやらしく光っている。

 だったら、最初から作り話をしておいてやろう。

 ジョーイは辺りを見回して、誰も居ないことを確認する仕草をわざと見せた。

 腰を屈めて、おばさんの耳元で囁く。

「ここだけの話にしておいて下さいね」

 少し声を落とすだけで、おばさんの息づかいが荒くなり、耳を大きく引き伸ばすように、ジョーイに向けた。

「もちろんよ」

「うちの母がファーストレディと友達でしょ。それでアメリカ大統領の秘密がないか、秘密組織が探っていたんですよ」

「あら、まあ、そうなの」

 こんな単純な嘘を鵜呑みにするおばさんにジョーイは楽しくなってくる。

「おばさんもこの事黙っておいて下さいね。ばれちゃうとどっかの組織から命狙われるかも。あまりうちと親しくしたりしない方がいいですよ」

「あら、怖い」

 かなりの効果があったのか、おばさんは後ずさると、辺りを見回してそして去って行った。

 嘘も方便だが、実際とてつもない秘密を抱えていることには変わりない。

 ギーのような輩がまた現われてもおかしくないかもしれない。

 それに立ち向かうために、大人になった時、自分が大きな力を持つ者になりたいとジョーイは切に願っていた。
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