ロストマーブルズ
「ちょっと留守している間に、好き勝手なことして。どこでそんな犬拾ってきたのよ。とにかく、まずはお風呂入りたい。話はそれからだわ。ジョーイ、悪いけどスーツケース部屋まで運んでちょうだい。ちゃんとお土産買ってきたからね」
玄関の三和土に置き去りにされたスーツケースを、ジョーイは黙って家に上げた。
サクラはツクモを困ったように横目で見つめながら、自分の部屋に入っていく。
ジョーイが後から部屋に入れば、サクラは箪笥の上に飾られた写真の前で、呆然と立ちすくんでいた。
「ジョーイ……」
何かを恐れるように、サクラは振り返る。
「ああ、母さん、シアーズ先生から話は聞いたよ」
サクラは力が抜けてペタンと畳に座り込んでしまった。泣き笑ったような顔が、諦めたようにも、気が楽になったようにも見える。
「そう、私がいない間に何かあったのね。そっか、もう隠さなくてもいいのね。ジョーイ、ごめんね」
ジョーイは写真立てを手に取り、それをもう一度よく見つめる。
若い頃の母親は、息子心ながらも、やはりきれいだった。
そして今も、年を重ねていても、そう思える。
自分以上に辛い思いをした母親の苦労。
心を閉ざした息子を心配する気持ち。
自分の事ばかり考えていたのが恥かしくなるくらい、よく見えていた。
玄関の三和土に置き去りにされたスーツケースを、ジョーイは黙って家に上げた。
サクラはツクモを困ったように横目で見つめながら、自分の部屋に入っていく。
ジョーイが後から部屋に入れば、サクラは箪笥の上に飾られた写真の前で、呆然と立ちすくんでいた。
「ジョーイ……」
何かを恐れるように、サクラは振り返る。
「ああ、母さん、シアーズ先生から話は聞いたよ」
サクラは力が抜けてペタンと畳に座り込んでしまった。泣き笑ったような顔が、諦めたようにも、気が楽になったようにも見える。
「そう、私がいない間に何かあったのね。そっか、もう隠さなくてもいいのね。ジョーイ、ごめんね」
ジョーイは写真立てを手に取り、それをもう一度よく見つめる。
若い頃の母親は、息子心ながらも、やはりきれいだった。
そして今も、年を重ねていても、そう思える。
自分以上に辛い思いをした母親の苦労。
心を閉ざした息子を心配する気持ち。
自分の事ばかり考えていたのが恥かしくなるくらい、よく見えていた。