ロストマーブルズ
「う、嘘だろ、アイツが俺の叔父。しかもこの写真、シアーズかよ。今と全然違うじゃないか」

「彼、昔は結構ワイルドでね、しかも冒険家でしょっちゅう色んな世界を旅してたわ」

 サクラは懐かしむように言った。

 シアーズが私情を挟んでいつも絡んできた訳、放っておけなかった真の意味、そこには血の通った家族の絆があった。

 ジョーイもまたヘナヘナと畳にへたり込んでいた。

「あっ、そうだわ」

 サクラは思い立って、押入れの奥から箱を引っ張り出してきた。

「何してんだ母さん?」

 箱を開けたとき、中から茶色いフクロウの縫いぐるみが出てきた。
 それをジョーイに渡す。

「もうこれをあなたに返してもいいわよね」

「なんだよ、この縫いぐるみは」

 薄汚れて古くなっていたが、大きな丸い目が特徴のかわいらしいフクロウだった。

「クマよ」

「はっ? 熊? これ、どうみてもフクロウじゃないか」

「だから、名前がクマちゃん。ジョーイ覚えてないの? アスカちゃんが持っていた縫いぐるみ」

「アスカ、アスカの縫いぐるみ」

「あの時、アスカちゃんがジョーイのイマジネーションだなんて言ってごめんね。真実を隠すためにはそうするしかなかったの」

「アスカ……」

「アスカちゃんがいたら、ジョーイはいつか真相を知ると思ったので、ああいう形になってしまった」

「クマ…… そっか俺はこの名前に惑わされて熊の縫いぐるみなんて思い込んでたのか。本当はフクロウだったなんて」

 ジョーイははっとした。
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