ロストマーブルズ
 ジョーイは門の前で聡を待っていたが、見れば見るほど『九十九』と書かれた表札が、目の前で浮き上がってくる。

(これは一体どういうことなんだ?)

 それに気を取られているうちに、いつの間にか聡が家の中から出てきていた。

「何そこで突っ立ってじろじろ見てるんだよ。言っとくけどそれ『キュウジュウキュウ』って読むなよ」

 聡に声を掛けられ、ジョーイはハッとした。

「それぐらい分かってるよ。お前もツクモって名前なのか?」

「そう。九十九聡。この犬のツクモと同じ」

 手紙に書いてあったカタカナのツクモと暗号の漢字で表された九十九。
 これはツクモが二人いるということを意味しているのではないだろうか。

 ここでカチッとパズルが当てはまる。

 『九十九にフクロウ』

 ジョーイは思わず、その暗号の言葉通りに、聡にフクロウを突き出した。

 それに聡は即、反応する。

「やっぱりそうか。お兄ちゃんがキノが言ってた人なんだ」

「何かキノから聞いてるのか?」

「うん。フクロウを俺に見せる人が来たら、これを渡してくれって頼まれてたんだ」

 聡は、家の中から持ってきた赤い缶をジョーイに差し出した。

 その缶はジョーイには見覚えがあった。

 駅のホームでキノがビー玉を転がす前に開けていた缶だった。

 ジョーイは、あの時のキノの様子を思い出しながら、それを受け取る。

 振れば中でゴロゴロと何かがぶつかる音がした。
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