ロストマーブルズ
『ジョーイ、いくつかビー玉失くしちゃった』
『アハハハ、それって気が狂ったっていう意味にもなるんだよ』
『それならほんとに狂っちゃうかも』
『えっ、まだ他のビー玉が箱に一杯入ってるじゃないか』
『でも一番お気に入りのを失くしたの』
『一個くらいいいじゃないか』
『よくない。だって虹色でとっても特別なの』

 声にならない感嘆の溜息が、自然に漏れた。

 その次の瞬間、間欠泉が噴出したかのように腹から感情がほとばしった。

「そうか、そうだったのか。キノはやっぱりアスカだったのか」

 この上ない喜びに体が震えていた。

 失くしたものを見つけたときの嬉しさ。
 知りたかったことを知ったときの満足感。

 全てが心をじわりと温めていく。

 光に照らされて、一気に世界が明るく変わっていく。

 目に映るものが、全て生き生きとした色を発光させて、キラキラと輝いて見えるようだった。

 この虹色のビー玉のように──

 ジョーイの顔は晴れやかだった。

 全ての雲が取り除かれた澄んだ青空のように、それはとても清々しいものだった。

 知らずと顔が綻んで、喜びを見出したこの上なく満足した笑顔になっている。

「そうか、そうなのか。やられた」

 その後は、くすぐったいくらいにおかしくて、豪快に腹を抱えて笑っていた。

 その傍で聡は、キョトンとして圧倒されていた。
< 311 / 320 >

この作品をシェア

pagetop