ロストマーブルズ
 駅から歩いて10分程の距離。

 オアシスのような駅から離れると、あとは砂漠地帯のように何も面白い建物はなく、住宅が連なる。

 比較的新しい洋風造りの家が立ち並ぶ一角に、ジョーイは住んでいた。

 ごく普通の家だが、母子家庭の親子には部屋が余る。

 だから留学生を受け入れることになり、トニーが同居することに何も抵抗はなかった訳だった。

 トニーを受け入れたことで部屋代としてのお金が入るのは、ラッキーなことのように思えた。
 それでも儲かるほど貰ってるわけではないが。

 お金にはこれといって困ることはなく、母親がフルタイムで責任を任されるような仕事についてるため、母子家庭ながらも少し余裕がある暮らしができていた。

 角を曲がった時だった。
 普段静かな自分の家の前に、この時タクシーが停まっているのが目に入る。

 何事だと不審な顔つきで急いで家に走りより、タクシーを尻目に門を開けると、微かにバタバタと廊下を走る振動が家の中から伝わってくるのを感じた。
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