ロストマーブルズ
普段この時間は誰も家に居ないはずだと、恐る恐るドアを開けると玄関先で母親の桐生サクラがちょうど靴を履いているところに出くわした。
「あっ、ジョーイ! ちょうどよかった」
「母さん、一体何が起こったんだ」
ジョーイは母親に声を掛けながら玄関に置かれたスーツケースを一瞥する。
「お母さん、今からビジネストリップなのよ」
「えっ、そんなの言ってなかったじゃないか」
「だから急なのよ。行くはずだった人が急病で急遽行けなくなって、仕方なしに私が行くことになっちゃったのよ」
「どこへ?」
「ニューヨーク」
「はっ? 一体どれくらいいくんだよ」
「1週間は帰ってこられないわ。だからその間トニーと二人でなんとかやってちょうだい。お金はテーブルの上に置いた。足りなければ自分の小遣いから立替えといて」
「えっ、なんだよそれ」
「とにかく急いでいるの。ごめん。向こうに着いたら電話する」
「落ち着けよ。パスポートちゃんと持ったのかよ」
「あっ! 忘れた」
サクラは折角履いた靴を脱ぎ、パニック寸前の奇声をあげながら慌てて奥へと走って行った。
タンスの引き出しを開けたのかごそごそする音が聞こえて来る。
「大丈夫かよ」
ジョーイは渋さを味わった顔をして、メタリックシルバーのスーツケースを眺めていた。
「あっ、ジョーイ! ちょうどよかった」
「母さん、一体何が起こったんだ」
ジョーイは母親に声を掛けながら玄関に置かれたスーツケースを一瞥する。
「お母さん、今からビジネストリップなのよ」
「えっ、そんなの言ってなかったじゃないか」
「だから急なのよ。行くはずだった人が急病で急遽行けなくなって、仕方なしに私が行くことになっちゃったのよ」
「どこへ?」
「ニューヨーク」
「はっ? 一体どれくらいいくんだよ」
「1週間は帰ってこられないわ。だからその間トニーと二人でなんとかやってちょうだい。お金はテーブルの上に置いた。足りなければ自分の小遣いから立替えといて」
「えっ、なんだよそれ」
「とにかく急いでいるの。ごめん。向こうに着いたら電話する」
「落ち着けよ。パスポートちゃんと持ったのかよ」
「あっ! 忘れた」
サクラは折角履いた靴を脱ぎ、パニック寸前の奇声をあげながら慌てて奥へと走って行った。
タンスの引き出しを開けたのかごそごそする音が聞こえて来る。
「大丈夫かよ」
ジョーイは渋さを味わった顔をして、メタリックシルバーのスーツケースを眺めていた。