ロストマーブルズ
 ご飯の支度が整い、ダイニングテーブルで二人は「いただきます」と手を合わせる。
 トニーはそのとたんにがっつきはじめた。

「ベリーグッド!」

 素直に喜んで食べるトニーに、ジョーイも心なしか嬉しかったが、謙遜するように表情に表さず静かに口を動かしていた。

「ジョーイと結婚したら楽だろうな。ジョーイが女性だったら俺、即結婚申し込んじゃう」

「バカ」

「だけど、ジョーイは高校卒業したらどうすんだ。そろそろ進路考えるときだろ。やっぱり大学行くよな。お前ならハーバードも目指せるんじゃないのか」

「まだ何も考えてないよ。目的もなくただ大学で学ぶなんてできっかよ」

「ジョーイはなんでもできるから、後は何がやりたいか早く決めるんだな」

「そういうトニーはどうすんだよ。このまま日本の大学に進むつもりか?」

「そうだな、日本語がいくら話せてもそれプラス何かがなければ就職に結び付けそうもなさそうだし、俺も何を学ぼうか迷う。できたらこの先もずっとジョーイと共に居たいぜ。なあ一緒の大学いこうか」

「小学生じゃあるまいし、自分の道は自分で切り開け」

「へいへい、ほんとにノリが悪いな。でもそういうとこも含めてジョーイのこと俺は好きだぜ」

 トニーは茶碗と箸を持ちながら、ウインクを投げかけていた。

 背筋に寒いものが走ったが、それでもジョーイは平然として黙々と食べ続けた。

 だが口には出さないが、トニーは親友と呼べるほどの仲になってるのは自分でも認めていた。
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