ロストマーブルズ
 食事が終わり、トニーは約束どおり食器洗いをしていた。

 ソファーに座ったジョーイは、テレビのリモコンを掴んで、忙しなくチャンネルを変える。

 コンビニで起こったことが、ニュースになってないか探し続けていた。

「おい、ジョーイ。落ち着いて一つのニュース番組だけ観ておけよ。それにあの出来事がニュースで取り上げられるとも限らないし」

 トニーの言う通り、素直にリモコンを置いた。

 片づけを終えたトニーも、ジョーイの隣に腰掛け一息ついた。

「ところでさ、話蒸し返すけど、俺が帰ってきたとき、駅で何をしてたんだ?」

 キノの出現で気を取られてすっかり忘れていたが、トニーのしつこさに辟易して顔が露骨に歪む。

 それが却って益々怪しいと、トニーの目つきが鋭くなった。

「別に何もしてないよ。買い物しようと駅前まで行ったら、ぼーっと歩いていたから通学の癖で駅までいっちまっただけだ」

 こんな理由で誤魔化されるわけがないとは分かっていたが、ジョーイはここまでなぜ自分の行動が気になるのか、トニーの拘りが病的なものに思えてきた。

「どうしてそんなに俺のこと一々気になるんだ。俺が何しようと勝手だろうが。そう言えばトニーは何かと目を光らせて物事を見ているよな。そう言えば電車の中で席を立った男。あれも気になって何か言おうとしてたけど、何か気になったことでもあったのか?」

「えっ? お、俺そんなこと言ったか?」

 今度はトニーが慌て出し、はぐらかしてきた。
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