ロストマーブルズ
「ふあぁぁ、グッモーニング、ジョーイ。サクラから連絡あったのか」

 トニーが欠伸をし、頭を掻きながら居間に入ってきた。
 ジョーイは変なところを見られたかと思うと、持っていた受話器をぶっきら棒に元に戻す。

「ああ、無事に着いたみたいだ。それより朝食どうする」
「俺、シリアルでいいから自分でするよ。その前にシャワー浴びてくるわ」

 トニーは腕を上げ体を伸ばしてバスルームへ向かった。

 ジョーイは先に自分の朝食を用意する。
 食パンを袋から取り出し、それをトースターに入れてレバーを下に押した。
 ぼーっとパンが焼けるのを暫く待っていると、夢のことがまた思い出された。

 夢の中までアスカがキノと入れ替わってしまい、記憶が塗り替えられたことの意味を重んじてしまう。

 違う、違う、アスカとキノは関係ない。
 絶対にありえない。

 強く否定し、そう思うこと自体馬鹿げたことのように扱うが、キノの存在はすでに心の深くまで入り込んでいた。

「なんでこんなに気になるんだ」

 苛立って叫んだと同時に、ポーンとトースターは音を立て、トーストが跳ね上がる。
 ジョーイは不覚にもそれに驚かされてドキッとしてしまった。
 それがキノのことを思って出た感情と錯覚してしまいそうだった。
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