ロストマーブルズ
第三章 アスカに惑わされて

 思い立ってジョーイは来たものの、一年生の教室がある場所にくれば、体は縛り付けられたかのように意思通りには動いてくれなかった。

 足をその方向に向けるだけで重力を倍以上に感じていた。

 すれ違うざまに下級生たちにじろじろ見られ、居心地が悪くなると、あっさりと諦めてしまった。

 何をそんなに自分自身を固めてしまうのだろう。

 思うように行動できない自分がもどかしい。

 素直に感情を表に出さないでいると、自分を釘で打ちつけ、考え方も捻じ曲げられない頑固さで凝り固まっていると気がついた。

 気づくのが遅い。

 キノに好奇心を持ち、自分の中のもやもやする記憶を重ね合わせて、追いかけようとする気持ちに、自分自身ついていけなくなる。

 落ち着かず、悶悶としてジョーイは下校していた。

 途中、道端の石を蹴るとコロコロと転がり、ビー玉のイメージと繋がっていく。

「そういえばアスカは虹色のビー玉を失くしたんだった。結局俺は買ってやると言ったのに約束守れなかった……」

 ぶつぶつと独り言を言いながら、また小石を蹴っていた。

 駅の近くまで来たとき、かわいい小物がショーウインドウに並んでいる雑貨屋が通りに面していた。

 駅前の雑貨屋で衝動買い──確かキノはそう言っていた。

 キノがホームでばら撒いたビー玉はここで買ったものなんだろうか。

 ジョーイの好奇心が再び疼き出した。

 お客が入りやすいように店のドアが開けっ放しにされ、そのドアにはオープンと英語で書かれたサインが斜めにぶら下がっている。

 ジョーイはふらりとその店に足を運んでしまった。
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