ロストマーブルズ

 もしかしたら、駅のホームでキノと会えるのでは……
 そんな淡い期待を持ちながら、ジョーイはホームへと続く階段を一段一段緊張して降りていた。

 しかし、キノの姿はそこにはなかった。

 前日、キノが座っていたベンチに近寄り、そこで飛び散ったビー玉の光景を思い出す。

 他にも探せば落ちているんじゃないかと辺りを見渡せば、本当にきらりと透き通った光を放つ丸いものが目に入った。

 ベンチの足元に隠れるように、透明のビー玉が一つ転がっていた。

 キノの置き土産のような気がして、ジョーイは手を伸ばし迷いなく拾った。
 それを指でつまんで目の前にかざし、光に向けて中を覗いてみる。

 別に変わったものは見えないが、過去に同じようにしてアスカと覗きあったことを思い出した。
 ここでもキノとアスカを混同してしまう。

 しかし、電車が入ってくるお知らせのメロディがホーム全体に流れると、あっさりと現実に引き戻された。

 電車がホームに入るのを眺めながら、ジョーイはそのビー玉をポケットに入れた。
 それはキノに近づく口実になる。

 上からポケットに触れ、ビー玉の膨らみを感じ取りながら、そして電車に乗った。
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