ロストマーブルズ
 ジョーイはまだ慎重だった。
 キノはアスカだとほぼ固まりつつあったところに予想もつかない展開になってしまい、がっかりとしてしまう。

 アスカがこっそりと自分に会いに来てくれたと勝手に想像していたことが馬鹿らしく、そして誰にこの話を漏らしたわけでもなく羞恥心を感じてしまった。

 折角やっと気がついた気持ちも宙ぶらりん。

(俺はキノを通してアスカを感じたかっただけか)

 このとき、詩織に言われた言葉を思い出した。

『人は気になる過去の記憶をすり替えようと今の状況に置き換えて解決したいって思うことってないかな』

 詩織が自分の妹、アスカをキノに例えたとき、ジョーイは思いっきり否定したくせに、自分はそれを棚にあげて過去の記憶を現在にすり替えようとしていた。

 そうすることが本当に楽だった。
 だが、キノはアスカではない。

(俺はアスカの幻影を追い求めすぎていたって訳か)

なんとも情けない、眉毛が浮いたような表情でふーっと鼻から息が漏れた。
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