(仮題)魔女のいるファンタジー
十、魔女のいない話・1

「白雪姫のように」

 私(わたくし)は誰かを好きになるのが怖いのだわ、と彼女は言った。

 ユリ兄さまに言わせると、恋愛恐怖症なんだそうよ。

 この世のどんな宝玉よりも美しい虹色の跋折羅眼(バザラがん)で、笑っているような泣いているような微笑みで、彼女は言う。

 ユリ兄さまも私も、誰かを愛した瞬間に、その相手の愛を永遠に失うことになるのですって。

 ねえピア兄さま、と翡翠色の髪の毛を揺らして美しい妹は僕の顔を覗き込む。兄さまは【血喰い】のユサアピアのことをご存じ?

 血喰い族ユサアピアに愛された者は、必ずそのユサアピアを愛するようになるのよ。

 あら、ご存じなのね。

 そうなのだったわ。ピア兄さまは、あの【昏冥の魔女】のお友達なのですものね。
< 1 / 82 >

この作品をシェア

pagetop