(仮題)魔女のいるファンタジー
 誰からも愛されるということは、それは幸福なのでしょうけれど、私がこんなこと言っては贅沢だと怒られてしまうのかもしれないけれど、でもね兄さま、私にはそれが、この世で誰からも愛されないということと同じくらい、不幸で哀しいことに思えてならないの。

 だから私は人を愛するのが怖い、いいえ、愛したくないのよ兄さま。
 ふふ、兄さまとはまるで反対ね。

 そう言ってまた悲しそうに笑う妹が──この不幸な妹が、幸福になるたった一つの方法を、僕は既にあの魔女から聞いて知っている。
 知っているのだけれども教えてやらない。
 教えてなんかやるものか。

「だったら僕を好きになってよ、リイ」

 代わりに僕は言ってみる。

「それで本当にこの僕が誰かを好きになるなんてことができるのなら、リイのことを愛させてみてくれよ」

 血の繋がったこの妹と、禁断の恋なんてものに落ちるのも悪くない。

 呪われたユサアピアの妹は、残酷なことを仰るのねと呟いた。

 いやあよ、兄さま。私、兄さま一人を幸せになんかしてあげなくてよ。ピア兄さまは今のまま、人を愛せない兄さまのままでいて。
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