(仮題)魔女のいるファンタジー
二、ヒロイン不在の話
 王子様は引きこもりでした。

 なんて書くと──当然次の一文を待たずして、そのおとぎ話からは夢が失われるだろう。

「このヒッキー野郎! ここを開けろ!」

 まあ、ともかく僕は、ただ今この国で社会問題になっている──世に言うところの「引きこもり」であり、

「おいコラ出てこい馬鹿皇子!」

 僕の肩書きは、ルリーダ王国の正統なる血を継ぐ「皇子殿下」で、つまり世間一般で言うところの「王子様」なのは確かだ。

「ピア! 返事くらいしやがれ!」

 ついでに「七人コビト」ではなくて、「ピア」というのが僕の本名。
 これも確か。

 つまり僕の現実は夢も希望もなくて、ついでにおとぎ話でもないってわけだ。

 僕がどうして引きこもりなんてやっているかと言うと──一つには経済的事情というものがある。
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