(仮題)魔女のいるファンタジー
 もっとも、個人の脳味噌の容量というのには限界がある。

 そこで何人もの脳味噌を専用のサークレットで繋げて、専用の巨大サーバーを構築し、そうしてできあがった大容量の情報置き場を他人に提供するということも為されている。

 他人の脳に記憶をアップロードするのは躊躇う人もいるが、考えてみればサーバーを形成している人間が全員一斉に死んだりしない限り、その情報は保たれるわけだから、保管の安全性という点では安心のシステムだろう。

 だからプライバシイに関わるような情報は自分の脳に留めておいて、公開したい情報だけ他人の脳を利用させてもらう。

 この記憶や知識の公開の仕方というのにも、個性が出る。

 一般にはホームページという、ページを捲ることで本のように情報を閲覧できる形式が多いが、最近は日記のような「ブログ」とよばれる形式も人気だ。

 さっき言ったサーバーシステムを使い、こういったホームページスペースを提供したり、他人のページを閲覧する際、その情報を直接自分の脳にロードする代わりに一時保管するサービスを提供したりする会社なんかも出てきて──「幻脳世界」は今や立派なビジネスとしても注目されているのだ。

「はーあ、よくも飽きねえよな、毎日毎日」
 アノンは溜息を吐いた。
< 52 / 82 >

この作品をシェア

pagetop