(仮題)魔女のいるファンタジー
「それはどうも。でも僕、ちょうど今、【夢界】で人と会ってたんだけどな」
 僕はよろよろと起きあがりながら言った。

 夢界というのが、さっきまで僕がいた仮想空間の名前だ。

 ネットワーク社会の発展により、僕が生まれるよりも前に幻脳空間に誕生した、バーチャルリアリティの街。

 物理技術や機械技術の発達した、架空の科学文明社会だ。

 この世界ではただの夢物語に過ぎなかったおとぎの国が、幻脳の世界には存在している。
 まさに夢の空間だ。

 あの街にあるような、合理・機能主義に基づく無駄を排したフォルムのビルディングは、伝統や格式を重んじるこの社会では建築不可能。
 そこでそれを建てたかった人たちが、幻脳の世界に街を一つ作ってしまったのが始まりだとか、そうではないとか言われている。
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