(仮題)魔女のいるファンタジー
他にも二、三の問題を片付けて──十時半現在、僕とアノンはリンデンバウムの中にいた。
どこかでこぽこぽと、水の流れる音がしている。
「まるで迷路だな」
メールに添付されていた地図を頼りに進みながら、僕は呟いた。
自動書記によって地図をプリントアウトしても良かったのだが、仮にも王家の秘密。形に残るものにはしないほうが無難だ。
かと言って脳の通常記憶野にダウンロードしてしまうと、僕の場合あっと言う間に、忘却によって情報が劣化する危険性が高い。
自分の脳だから、悲しいことにそこらへんは百も承知だ。
仕方がないので、今の僕は片目を瞑ってパソコンの画像を確かめながら歩くという器用な真似をしていた。
「頼むから迷うんじゃねーぞ、ピア」と、そんな僕の手を引っ張って歩きながらアノンが言う。
「菩提樹のでかさはわかってるだろ」
菩提樹──リンデンバウムというのは、首都レクラムの真ん中にそびえ立つシナノキの巨木のことで、この国ルリーダのシンボルにもなっている。
どこかでこぽこぽと、水の流れる音がしている。
「まるで迷路だな」
メールに添付されていた地図を頼りに進みながら、僕は呟いた。
自動書記によって地図をプリントアウトしても良かったのだが、仮にも王家の秘密。形に残るものにはしないほうが無難だ。
かと言って脳の通常記憶野にダウンロードしてしまうと、僕の場合あっと言う間に、忘却によって情報が劣化する危険性が高い。
自分の脳だから、悲しいことにそこらへんは百も承知だ。
仕方がないので、今の僕は片目を瞑ってパソコンの画像を確かめながら歩くという器用な真似をしていた。
「頼むから迷うんじゃねーぞ、ピア」と、そんな僕の手を引っ張って歩きながらアノンが言う。
「菩提樹のでかさはわかってるだろ」
菩提樹──リンデンバウムというのは、首都レクラムの真ん中にそびえ立つシナノキの巨木のことで、この国ルリーダのシンボルにもなっている。