(仮題)魔女のいるファンタジー
 巨木と言っても、単なる「巨大な木」を想像してはイケナイ。

「根は、首都レクラムの地下全てを侵食してるって話だっけ?」
「大した根性だよな」
「根だけに」

「──寒いぞピア」
「・・・・・・」

 巨大の規模が違う。

 このリンデンバウム。ルリーダ王国のどの山よりも高い樹木、ルリーダ王国のどこにいても見える樹木、巨木だということがわからないほどに巨大な樹木なのだ。

 樹木にしてはちょっと頑張りすぎだと僕は思う。

 もと樹木、と言ったほうが良いかもしれない。

 一本の巨木に見えるが、もともとは幾本もの普通のシナノキだったものが、絡み合い融合した成れの果てなのだそうだ。

 花も咲かせず葉の一枚すらなく、既に陽の光を求めることも生長することも止め、ただただ巨大化した白いばかりの骨のような幹と枝を周囲に伸ばしてそれでも立ち枯れているわけでもなく──生きている。

 こんな生き物をもはや「樹木」とは──「植物」とは呼べないだろう。

 樹木の怪物。
 木のお化け。

 暴走した生命の異形──。

「しかしリンデンバウムの死脈通路なんて、僕は単なるお伽話か都市伝説だと思ってたけどな」
 ぼんやりと発光する内壁を眺めて僕は言った。
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