秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「雪が降り始めたぞ。電車が止まる前に帰れ」
雪?
ずっとブラインドを下げた部屋にこもっていたから、知らなかった。
高畑さんにそう言われて、ブラインドの隙間から空を見ると、ハラハラと舞う柔らかそうな雪。
これは積もるかもしれない。
「それではお先に失礼します」
私はお言葉に甘えて会社を出た。
聡さんがまだ残って仕事をしていたからうしろ髪を引かれたけれど、おそらく高畑さんが送るだろう。
私まで帰宅困難になってしまうと、余計な迷惑がかかる。
家までは電車で四十分。
途中から座り、さっきのスピーチを読み直して、どう訂正しようか考えた。
「なに、これ」
ずっとスピーチに集中していたから、電車を降りたときに驚いた。
あっという間に雪が積もり、一面真っ白になっていたからだ。