秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「帰ってきてよかった」
高畑さんの言うことは、いつも間違っていない。
原稿をバッグに放り込み、歩いて家に向かった。
その晩は、この冬一番の寒気が入っているらしく、深々と降り積もる雪はやむ気配がなかった。
次の朝目覚めると、ベランダにまで降り積もった雪に驚きつつ、支度を始める。
まだ朝の六時。
でも今日は、どうしても手に入れなければならないものがある。
温かいインナーを重ね着してスーツを着ると、ダウンを羽織る。
手袋とマフラーも忘れずに。
長靴はあいにく持ち合わせていなくて、ブーツに防水スプレーをかけ、家を飛び出した。
だけど……軽く十センチを越える積雪と、まだハラハラと舞う雪のせいで、交通機関は麻痺している。