秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「だからせめて、今は一緒にいてくれ」
私の背中に回る手に力がこもる。
こんなに私を求めてくれているなんて、知らなかった。
「私、なにもできないですよ?」
「そばにいればいい。それだけでいい」
「……はい」
冷徹な上司の腕の中は、びっくりするほど温かい。
私も彼の背中に手を回し、恐る恐る抱きしめた。
それから本気で私を帰すつもりがなさそうな彼は、お風呂を入れてくれた。
驚くことにお風呂はジャグジー付き。
右から左から吹き出す泡が、冷え切った体を温めてくれる。
「あー、気持ちいい」
まんまと捕獲された気もするけれど、大きな浴槽は気に入ってしまった。
思いっきりリラックスして浸かっていると……。
「悠里」
「はっ、はいっ!」
ドアの外で伊吹さんの声がして慌てた。
「着替え置いておく」
「すみません」
以前倒れてドアを開けられたことを思い出し身構えたけれど、彼の気配はそのまま遠ざかった。