秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

『ひとり立ちしていくのが寂しい』なんて口にした彼だけど、すごく優しい顔で微笑んでくれたから、それでも喜んでくれているはずだ。

自分の不出来に落ち込むこともあるけれど、こうしてひとつずつできることを積み重ねるしかないと、気合を入れ直した。


その日は自分のやるべきことがわかった気がして、ウキウキした気持ちで帰路についた。
いつもの駅で降りて家に向かって歩き出すと、突然目の前に人が現れ驚いた。


「悠里」

「どうして、ここに?」


それは、紳だった。


「少し、話がしたい」


そんなこと言ったって、私は話したくない。


「ううん、話すことなんてない。ごめんね。それじゃあ」

「待って」


歩きはじめると、腕を引かれてつかまってしまった。
< 197 / 370 >

この作品をシェア

pagetop