秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「奈津にはきちんと謝った。俺は悠里のことが好きで、結婚まで考えてるって」
「えっ……」
奈津はあの日、『もう返さない』と私に宣戦布告してきた。
だからてっきり両想いだとばかり思ってた。
それなのに、紳が私との結婚まで考えていたなんて。
立ち止まると、紳は私の目を真っ直ぐ見つめる。
「悠里に会いたくてたまらなかった。あれからすぐに転職してしまったお前のところに、何度会いに行こうかと思ったことか。でも、自分のしでかしたことを考えるとできなかった」
「そんなの、当然、よ」
知らなかった事実が明らかになって、動揺してしまう。
「奈津は?」
「あれからはプライベートでは一度も会ってない」
でも、だからと言って、もう元には戻れない。
ううん。私の心は今、別の人の方を向いている。