秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「悠里。あの人と付き合ってるのか?」
「そう。すごく大事にしてもらってるの」
私はとっさにそう言ってしまった。
伊吹さんの告白に『ノー』と言ったものの、大切にしてもらえていることには違いない。
だけど紳は私の肩に手を置き、さらに続ける。
「俺のこと、もう一度考えてくれないか。もう二度と悠里を悲しませたりしない。約束する」
「彼がいるって、言ってるじゃない」
もう、私の心をかき回さないで。
激しく首を振ると、紳は苦しげな顔をする。
「俺はあきらめない」
「お願い。もう二度とこないで」
今度こそ紳の手を振り切って走った。
全速力で走ったからか、心臓が止まってしまうんじゃないかと思うほど苦しい。
でも、心がもっと痛い。
どうして今頃になってそんなことを言ってくるの?
もう私は、過去には戻らない。
戻りたくない。