秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
紳がどれだけ謝っても、私の親友に手を出したことには変わりない。
それを許せるほど、心は広くない。
バタバタと部屋に駆け込んで呆然とする。
『俺はあきらめない』という紳の言葉がリフレインする。
伊吹さんのおかげで、すべて清算できたつもりだったのに。
「伊吹さん……」
会いたい。抱きしめてほしい。
私の気持ちが決して惑わされないように。
紳に再会して、伊吹さんへの気持ちをハッキリと確信したなんて、皮肉だった。
伊吹さんの声が聞きたくてスマホを取り出したけれど、今頃彼は接待の席にいる。
その晩はスマホを握りしめたままベッドに入ったものの、うまく寝つけなかった。
「おはようございます」
朝早く目覚めすぎてしまった私は、いつもより三十分早めに出勤した。
一番乗りだと思っていたのに、伊吹さんはもう仕事を始めていた。