秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「どうしよう。私のせいだ……」
「それは違う。彼女、『証拠です』と頬や足のあざを見せながら、『神様はちゃんと見てた』って笑ってたらしいぞ。上司はそれがなんのことかわからなくて聞き返したけど、『これでいいんです』としか言わなかったと……」
「奈津……」
いたたまれなくなって唇を噛みしめると、鉄の味がする。
「傷害事件ととらえられ懲戒解雇も検討されたが、付き合いがあったということで見送られ、自主退社で落ち着いたんだそうだ」
奈津はそんなことを少しも手紙に触れていなかった。
こうして伊吹さんが気づいて問い合わせてくれなければ、一生知らなかったかもしれない。
「奈津から手紙が来ました。ごめんなさいって。幸せになってって」
そこまで言うと、我慢していた一粒涙がこぼれていった。
「そうか。彼女は精一杯の謝罪をしてくれたんじゃないのか?」
「はい」