秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「焦げるぞ」
「あっ!」
伊吹さんに指摘され慌てて鍋の火を止めると、クスッと笑われてしまう有り様だ。
でも、不意打ちのキスなんて、私にはハードルが高いから仕方ない。
トマト煮込みに入れたピーマンを見て、少し顔をしかめた彼だけど、ちゃんと食べてくれた。
「ちょっと苦味が……。まぁでも食べられる」
完璧秘書の彼が、子供みたいな発言だ。
「健康になりますから、頑張ってくださいね」
もうひとつ彼のお皿に乗せると、「はー」と溜息をついている。
「明日、行きたいところあるのか?」
それでもパクッとピーマンを食べた彼は、口を開いた。
「いえ。いろいろ考えたんですけど、思いつかなくて」
大人な彼とどこに行ったらいいのかなんてわからない。
「それなら、俺が決めるぞ」
「はい。お願いします」