秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
私がそう言うと、書類に目を落としていた彼の眉間にシワが寄った気がする。
「それで?」
「はい。折り返し電話を入れるとお話ししましたが、今晩空けておいてと伝えてくれと」
「わかった」
彼が険しい表情を見せたのは一瞬だけ。
いつものポーカーフェイスに戻り、再び書類を読みはじめた。
それから自分の席に戻ったものの、なんだか胸がざわついて仕事がはかどらない。
「広瀬」
「はい」
「もうそろそろ出る。車を回すように手配を」
十一時過ぎになり高畑さんは立ち上がった。
「はい」
車を玄関に回すように内線を入れていると、彼は私の前を通って出ていった。
結局、なにも聞けなかった。
梶さんのことが気になって仕方ないのに、ここでは上司と部下。