秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「失礼します。コーヒーをお持ちしました」
「広瀬(ひろせ)さん、ありがとう。あぁっ」
聡さんは私にお礼を言いながら顔をしかめる。
「高畑さん、マッサージうますぎる。ツボに入るとたまらない」
「聡さん、肩がカチカチですよ。体調管理も私たちの仕事ですから」
社長と同じ"宮城"である彼のことは、下の名前で呼んでいる。
いわゆる御曹司の聡さんは、ドラ息子かと思っていたらまったく違い、高畑さんが一目を置くほどの勉強家で、今まで勤めていた傘下の食品会社ではトップセールスを誇っていたと聞く。
「気をつけるよ」
「はい。それでは午後のスケジュールを……」
どうやらマッサージは終わったらしい。
高畑さんが厚い手帳を開きスケジュールを確認し始めたので、私はそっと部屋を出た。