秘書室室長がグイグイ迫ってきます！

マンションのエントランスで待っていると、伊吹さんはそれから十分ほどしてからやって来た。


「悠里……」

「よかった。来てくれた」

「当たり前だ」


なんだか胸がいっぱいでうつむいたままうなずくと、彼は優しく私を抱き寄せる。


「アイツの気持ち、ちゃんと聞いてきた。俺の気持ちも伝えてきた」

「はい」


これでよかったのか、わからない。

彼の愛情が自分に向いていると感じているくせして、彼女に胸の内を告白させるなんて、ひどいことをしたかもしれない。

でも、私には彼女がそうしたがっているように見えた。
そして、気持ちに区切りをつけて、前に進もうとしていると感じた。


そうでなければ、過去の話でもなんでもして、私と伊吹さんの仲をもっとかき回しただろう。